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横浜地方裁判所 昭和61年(ワ)3528号 判決 1987年2月12日

原告

田島大二郎

被告

裁判官岩崎敬

被告

右代表者法務大臣

遠藤要

主文

本件訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一本件訴えの要旨は、被告の裁判官岩崎敬において、原告を当事者(原告)とする相模原簡易裁判所昭和六一年(ハ)第三四〇号事件につき、当該訴えのうち一の請求についての価額が算定不能なので、民訴法二二条二項の規定によりその価額は九〇万円を超過するものと看做されることになり、裁判所法三三条一項一号、二四条一号の規定により地方裁判所の管轄に属するとし、更に、他の一の請求は右の請求と併合して提起された関連請求であるとして、右訴えの全部を横浜地方裁判所に移送する旨の決定をしたところ、原告は、右訴えの目的の価額が算定不能の事件でもないのに、原告に釈明することなく、一方的に、同決定がなされたことは不服であると主張し、右担当裁判官を被告として、右のように訴訟の目的の価額が算定不能であると認定したこと、裁判所法三三条一項一号所定の訴訟に当らないと認定したこと、及び関連請求に係る訴えであると認定した各理由、根拠等について知る権利の存在確認を求めると共に、同裁判官及び被告国に対し、右のような一方的になされた移送決定によつて原告の被つた精神的損害の賠償として、五万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める、というにある。

二しかしながら、移送決定に不服のある当事者は即時抗告の方法によつてその不服申立てをすることが許されている(民訴法三三条参照)のであるから、原告が前記移送決定に不服であるならば即時抗告の方法によるべきであり、それ以外に、担当裁判官を相手方として前記各知る権利の存在確認を求める訴えを提起することは許されていないうえ、その利益のないことも明らかである。

したがつて、右各知る権利の存在確認請求に係る訴えは不適法であり、かつ、その欠缺を補正することができないことも明らかである。

三原告は自己の提起した訴えについてその意に反した裁判などがなされると、相模原簡易裁判所又は横浜地方裁判所に担当裁判官などを相手方として、訴訟手続などに係る多種多様の義務の存在又は不存在の確認を求める訴えを提起し、これと併せて、当該裁判官等及び国に対し損害賠償(最近は一率に五万円宛)を求め、右訴えが認容されない場合には、更に、当該担当裁判官及び国を相手方として同じ様に、また、確認及び損害賠償請求の訴えを提起するのが常態であつて、その件数もまた相当の数に上つていることは当裁判所に顕著な事実である。

そして、本件訴えもまた右と全く同じ態様に属する訴訟事件であることが明らかである。原告が自己の権利を確保するために民事裁判制度を利用する以上は、民訴法その他の法令の定めに従わねばならないことは言をまたないところであるから、原告が前記移送決定に不服があるならば、即時抗告の方法によつてその権利の保全を図るべきであるにもかかわらず、同決定に不満があるとして担当裁判官等に対し国家賠償請求をすることは、当該裁判官に対する単なる嫌がらせを意図してなされたものであると解されてもやむをえないものといわざるをえない。

そうすると、原告の前記国家賠償の請求は、訴権の濫用というべきである。したがつて、原告の同請求に係る訴えもまた不適法であり、かつ、その欠缺を補正することができないことも明らかである。

四よつて、原告の本件訴えは、民訴法二〇二条によりいずれもこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき同法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官古館清吾)

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